秘密
私達は体育館の隅に腰掛けて、バスケ部の練習風景を見ていた。
リョータ君達三年生と二年生との紅白戦をやっているみたい。
みんな汗だくになって必死にボールを追いかけ、キュッキュッと靴をならし、大きな掛け声を出しながら、コート中を走り回る。
私はさっきから気になって仕方ない事を思いきって佐野君に聞いてみた。
「…あの…佐野君?膝が悪いの?」
すると佐野君はコートを見つめたままボソリと呟いた。
「…左膝靭帯断絶」
「えっ?」
「…二回やった」
「中2の全国大会の決勝で一回、手術して、リハビリで治ったと思ったら…また中3の全国大会で二回目…今度はもう医者からバスケは諦めろって…次は保証出来ないって…」
「……そんな…」
「…悔しかった、でもどうする事も出来ないって、バスケを続けている限りまた繰り返すって言われた…最悪日常生活に支障を来たすって…」
私は目の前が真っ暗になったような気がした。
「毎日がバスケ三昧だったんだ、いつかプロになるんだって思ってた、周りからも期待されてたし、毎日吐くまで練習したり…」
……佐野君。
「でも、楽しかった。何よりバスケが大好きだったし…」
…………
「…だから俺はそんな辛い思い出が詰まったこの街から、逃げ出して来たんだ…憐れみや同情なんてされたくなかった」
…佐野君、もういいよ、わかったから…
「…いや、ホントは違うな…跳ぶ事が出来なくなった俺を見られるのがたまらなく嫌だったんだ…」
私は隣に座る佐野君の左膝を触り、優しく撫でた。
佐野君。
だからよく左膝撫でてたんだね?
痛かったでしょ?
二回も手術して……
大好きなバスケが出来なくなって…
佐野君は撫でる私の手に、自分の手を重ねて私の顔を見て言った。
「…そんな顔するなよ、泣きそうな顔してる…」
佐野君の事もっと知りたいって思った。
でも私が無理言ってここに来てしまったから、佐野君に辛い思いをさせてしまった。
「…ごめんなさい」
「何で謝るの?」
「…だって、私がここに…」
「来てよかったと思ってるよ?俺」
私を遮る佐野君の笑顔に胸が苦しくなった。