秘密
「おにーちゃん?どうしたの?入らないの?」
戸口を開けて中に入ろうとしない俺にまりあがそう言って。
「え?ああ、ごめん」
気合いを入れて扉を開けたものの、中にはどうやら誰も居ない。
佑樹は?
もう帰ったのか?
奥のベッドのカーテンが半分だけ閉じていて、そのベッドには恐らく奏が横になっている筈。
中に入り、まりあを手前のベッドに下ろす。
「ありがとう、おにーちゃん」
「今度からはきちんと杖ついて歩けよ?」
まりあの頭を撫でてやり、隣のベッドのカーテンを詰まんで中を覗き込む。
「奏?」
呼んでみたけど奏からの返事はなくて。
「おねーちゃん、まだ起きないね…」
「……うん」
白い顔をピクリともさせないで、その瞳は閉じたまま。
俺は奏のベッドに近付き、その横にしゃがみ込んだ。
手を伸ばし奏の頬に触れてみる。
俺の掌よりも冷たい頬を軽く撫でながら。
「……奏」
もう一度名前を呼んだ。
「おねーちゃん、奏ちゃんって言うの?」
まりあがそう言ってきて。
「そうだよ…、あのさ?まりあちゃん、さっきまで誰かここに来てた?」
「え?うーん…、まりあさっきまでキッズルームで遊んでたから…わかんない」
「キッズルーム?」
「うん。おもちゃとかゲームとかアニメとか、いろいろ遊べるところ」
これだけ大きな総合病院なんだ、子供向けの遊び場があってもおかしくない。
カケルが帰った後に佑樹も帰ったのか?
−−コンコン…
ノックの音がしたかと思うと扉が静かに開いて、佑樹かと思い立ち上がると。
「あら?どなたかしら?」
そこには立っていたのは落ち着いた感じの、三十代中場位だろうか?綺麗な女性だった。