秘密
「おばさん、奏ちゃんのママ?」
俺が言葉を発する前にまりあがそう聞いて、女性はにっこりと微笑むと部屋の中に入ってきて。
「初めまして、まりあちゃん、かな?わたしは残念ながら奏ちゃんのママじゃないのよ?」
大きな紙袋を手に持って、俺の居る方へと近付いてきて。
「あなたは?まりあちゃんのお兄さん?」
「え?…あ……、いえ、違います」
「あ。もしかして、昨日奏ちゃんを助けてくれた佐野君かしら?」
……助けてなんかいないけど。
「はい…」
女性は紙袋の中身を取り出しながら、ベッド脇に備え付けてある、テレビ付きのラックの中にしまい始めた。
「昨日健吾さんから聞いて、びっくりしちゃって。でも、大怪我には変わりはないけど、奏ちゃんが無事でよかった。あなたのお陰よ、ありがとう」
「……健吾さん?」
「あ。ごめんなさいね?健吾さんは奏ちゃんのお父さん。わたしは健吾さんと同じ会社に勤めてるの。楠田成美って言います」
「同じ会社?…」
「そう。今健吾さん仕事が忙しくて、入院の準備はわたしが申し出たの。それに女の子の入院の準備って男の人には無理じゃない?色々と」
テキパキと話しながらも綺麗に整理しながら、荷物をしまう成美さんは、やけに奏の父親と親しそうだけど。
もしかして、以前奏をおぶって家まで送って行った時、父親と一緒にタクシーに乗ってた女と同じ人だろうか?
だとしたらこの人は奏の父親の恋人か?
「奏ちゃん……、まだ目が覚めないみたいね……」
荷物を片付けた終えた成美さんはベッド脇に手をついて、奏の額にかかる髪を優しく撫でていた。