秘密




成美さんは買ってきたらしいペットボトルのお茶をしまおうと、ベッドの下にある小さな冷蔵庫を開け、その中にある箱を見つけて。



「あら?これはあなたが持ってきてくれたの?」



見てみるとカケルの店のケーキの箱。



「いえ.俺じゃないです。さっき奏のバイト先のオーナーが来てたみたいで、多分その人だと思います」


「わざわざオーナーさんが来てくれたのね。奏ちゃんアルバイト楽しいって言ってたから、とても優しいオーナーさんなのね、確か駅前ビルの七階だったわよね?今度お礼に行かなくちゃ」



ケーキの箱を取り出して箱を開くと成美さんは。



「わあー、可愛いケーキ。でもこんなに沢山奏ちゃんも食べられないから、まりあちゃん、食べるの手伝ってくれないかな?」


「えー。いいの?まりあケーキだいすきー」


「あ。お皿がないから、おばさん売店で買ってくるわね?ちょっと待っててね?」


「まりあも行くー」


「え?でもまりあちゃん、怪我してるし…」


「大丈夫。まりあコレに乗れるよ」



と、まりあが指差したのは折り畳まれた車椅子。



「うんしょ」


まりあは折り畳まれた車椅子を慣れた手付きで開くと、そこにちょこんと腰を下ろした。



くるりと車椅子を一回転させて、ピタリと止まる。



「まりあ上手でしょ?」



得意気に笑って見せた。



「ふふ。上手ね。じゃあ一緒に行こうか?」


「うん!」


「佐野君。まだ帰らないでね?きちんとお礼したいから、ちょっと待っててね?」


「…そんな…、礼なんて…」



第一気の利かない俺は土産すら持ってきてない。



「じゃ、おにーちゃん、行ってきまぁす!」



成美さんはまりあの車椅子を押して、まりあと二人病室から出ていってしまった。





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