秘密
学校を出て海岸通りをバイクで走っていると、住宅街が見えてきた。
バイクはその住宅街の中に入り、一軒の家の前に止まった。
表札を見ると『佐野』と書かれていた。
ここが佐野君の家。
バイクを降りると、佐野君は玄関の横の駐車スペースにバイクを停めた。
そこにはもう一台のバイクがあった。
佐野君のかな?
でも佐野君のバイクよりも大きいな。
佐野君はバイクを停めると、その赤と黒の大きなバイクを触り、ボソリと呟く。
「…ヤマハYZF750SP…」
そう言うと玄関に向かい、勢いよくドアを開けた。
「兄貴!何だあれ?YZF!買ったのか?」
「おう。やっぱり茜か、久しぶりだな、お帰り。あれか?勿論買ったさ、ははは」
玄関から男の人が出てきた。
その人は…
…ん?
髪が黒い佐野君?
…嘘…佐野君そっくり…兄貴って…佐野君のお兄さん?
「…誰?この可愛い子…もしかして…お前の彼女?」
お兄さんは私を指差し、佐野君を見た。
「…そうだよ」
えっ?佐野君、私また彼女になるの?
「はっ、はじめまして。奥村奏です」
お兄さんにペコリと頭を下げた。
「…可愛い…」
お兄さんは私に近付くと、
「茜なんかやめて俺にしない?」
とにこやかに言った。
「はあ?兄貴!ふざけんな!」
佐野君はお兄さんの首を絞める。
「…うぐっ!冗談だって、冗談!離せ」
佐野君が手を離すとお兄さんは、
「ほら、茜、彼女固まってるぞ、家に上がってもらえ」
「あ、ごめん、奏、上がって」
玄関に入ると佐野君のお母さんらしき人が、廊下からこちらに向かってスリッパをパタパタと鳴らして歩いてきた。
「茜!帰ってくる時は連絡しなさい!って…あら?どなた?」
私を見てお母さんが言うと、お兄さんが、
「…茜の彼女」
「えっ?やだ!家の中散らかってるのに…茜!彼女連れてくるなら、一言位連絡しなさいよね!」
「…いつも散らかってるだろ?今さら気取るな…」
お母さんは佐野君の頭をグーで叩く。
「イテッ!」
「何言ってんのこの子は…おほほ。彼女さん、散らかってますけど、上がって?」
私はおかしくて思わず笑った。