秘密
私はお母さんにリビングに通され、紅茶をご馳走になっていた。
佐野君はお兄さんとあの大きなバイクで「すぐ戻るから」と言って出掛けてしまった。
お母さんはとても明るく気さくな人で、私は終始笑ってばかりいた。
「でも茜にこんなに可愛い彼女が居るなんて、正直驚いた。お父さんも居ればよかったのに、今日に限ってゴルフに行ってるのよ〜、いつも休日は家でゴロゴロしてて邪魔なだけなんだけどね?あはは…」
…ごめんなさい、お母さん…
ホントは彼女じゃないんです…
「…茜は…学校ではどうかしら?まだ高校生なのに…1人暮らしとか…ちょっと心配で…」
お母さんは少しうつ向き、そう言って小さく笑った。
…お母さん。
佐野君の事心配なんだ。
「…佐野君は、とても優しい人です。毎日アルバイト頑張ってて…あ。ちゃんと毎日真面目に学校にも来てますよ?見た目はちょっと派手だけど…カッコいいから女の子にモテてます…ふふふ」
「あら?茜ってば、あたしに似てモテモテ?あはは。奏ちゃん心配でしょ?」
「いえ…そんな事」
「…でも、よかった。あの子…バスケやめてから…1人暮らししたいって言って…高校も隣の県の進学校受験するって言って、偏差値高いし…もし合格したら許すって言ったら、ホントに合格しちゃったの…」
…そうだったんだ。
「初めにあんな事があって…手術、リハビリで半年…さらにまた…あんなにバスケが好きなのに…神様も意地悪よね?だから、茜の好きにさせる事にしたの…」
「…こんな事言ったらいけないのかも知れませんけど…」
「何?奏ちゃん?」
「…佐野君が同じ学校に来てくれたから、私は佐野君に出逢う事ができました。それは私にとって、とても大切な事です…」
佐野君のお母さんに何故か、私は今思ってる事を素直に口にする事ができた。
それはお母さんも私に心から話してくれているから。
佐野君の彼女だと思ってそう言ってくれているのはわかってるけど、私が彼女じゃないって知ったらお母さんは怒るかな?
「…奏ちゃんは茜の事がホントに好きなのね?茜のやつ、こんなに思われてて…ふふふ」
…え?
私が……佐野君を…好き?
カチリとパズルのピースがはまったようにそれは形になった。
佐野君が好き。