秘密


「…はぁ」

俺は深く息を吐くとアルバムを拾い本棚に戻した。

…兄貴の奴…今頃隣の部屋でコップに耳を当ててるに違いない。

24にもなってやる事子供…
…邪魔しやがって。ちっ。


「…え?戻しちゃうの?」

「これはダメ。見るならこっちのにして」

もう少し成長した俺のアルバムを取り出し、奏に渡した。

奏は開いて見る。

「佐野君、小学生だ。入学式?かわい〜!」


いや、だから…
可愛いのは……

…もうやめよう、キリがない。


「あ。この頃からバスケ始めたんだね?」

「小3からだよ」

「佐野君、いちばん小さいね?」

「はは。俺ミニバスん時、同級ん中でいちばんチビだったからな」

「えぇ〜?今じゃ考えられない…」

「でもいちばんデカい奴よりも高く跳んでたよ…」

「……そうなんだ…」


奏の笑顔が消えた。


「……俺さ…」

「…何?」

「今日、ホントの事言うと、あまり学校には行きたくなかったんだ…」

「……うん…」

「でもさ、あいつらの練習見てて思ったんだ」

「…何を?」

「もう以前みたいに跳ぶ事は出来ないけど、俺なりに出来る事もあるんだって」

「…うん」

「自分がバスケ出来なくなったからって、俺がバスケを好きな事には変わりない。これからもそれは変わらない」

「…………」

「将来、どんな形であれ、バスケに携わって生きていきたい、まだ具体的には形になっていないけど、ミニバスのコーチでもいい、高田先生みたいな部活の顧問でもいい…」


奏の黒目がちな瞳が潤んでいるのは、悲しいからなんかじゃない。

きっとそうだ。


「…今までやる気無くして、いじけてた自分が恥ずかしい、だから今日は奏に感謝してる、俺を学校に行こうって誘ってくれなかったら、俺はずっと中途半端で、いじけたままだったと思うから…」


奏の大きな瞳から涙が溢れてくる。


「…奏。ありがとう」


奏の頬に触れ、親指で涙を拭う。


(…ううっ…ヒック…うぅ…)


壁の向こうから兄貴のすすり泣く声が…

聞き耳立ててんじゃねぇよ……

バカ兄貴……

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