秘密
◇第19話◇
◇◇◇







「イタリア?」

「うん。フィレンツェ」


お見舞いに来てくれた佑樹が、イタリアに行く事になったと私に告げた。


「お前との別荘行きも無理だし、父親が仕事で10日間イタリタに行くらしいから、俺もそれに着いていく事にしたんだ」


夏休みに私達は毎年夏に訪れていた別荘に、今年は仕事が忙しくて行けそうない親とは行かないで、二人で行く予定をしていたらしいんだけど、私が怪我をしてしまった為に、それも出来なくなってしまった。


「前から行きたかったんだよ、イタリア。向こうの建造物はホントに良く出来てる。数百年経っても当時のままだ。一度自分の目で本物を見てみたかったんだ、いい機会だから俺も同行させてもらう」


佑樹は家業が建設会社の為か、建物や歴史的寺院等、その他の建造物なんかを見るのが凄く好きで、自身も図面を引いたりして、あれこれとよく構想を練る。


私はそんな専門的な事はよくはわからないけど、佑樹にそういった才能があるのは私にもわかっているつもり。


「うん。行ってきなよ、折角の機会だし」

「ああ。お前には悪いけど、そうさせてもらう」

「私の事は気にしないで?」


佑樹とはそれからとりとめの無い話をしていると、病室のドアをノックする音がして、ゆっくりと扉が開いた。


「……失礼します…」


遠慮がちに顔を覗かせたのは、花束を抱えた見知らぬ女の子。


「……美里」

「佑樹……、来てたんだ…」

「何しに来たんだ?」

「何って…、奥村さんのお見舞いだよ」


佑樹の知り合い?


「あの……、どうぞ?中に入って?」


私がそう言うと、美里と呼ばれたその女の子は病室に入ってきた。


「はいコレ、お見舞い」

「わあ。ありがとう。可愛いひまわり」


花束は夏らしい小さくて可愛いひまわりが沢山。


佑樹の知り合いって事は、私の知り合いでもある訳だよね?


今の私のクラスメートとか?


「あの、美里、さん?ごめんなさい…、私、凄く失礼な事だけど、事故以前の数ヶ月間の記憶が無いんだ…、だから…」

「奏、余計な事言わなくていい」


美里さんに今の私の状況を説明しようとしたら、佑樹がそれを遮った。



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