秘密
余計な事……?
「奥村さん……、私の事、覚えてないの?」
「あ……うん。ごめんなさい…、私…」
「美里、ちょっと来い」
佑樹はパイプ椅子から立ち上がると、美里さんの腕を掴んで病室から出ようとしているみたいで。
「ちょっ、離してよっ!奥村さん?あたしだよ?ホントに覚えてない?」
「…うん…ごめんね?」
「嘘でしょ?だったら茜の事も……」
「美里っ!」
佑樹の大きな声に私は驚き、美里さんは放心したように私の顔を見つめていた。
「美里、お前には関係ない、帰れよ」
佑樹の冷たい声が病室に響いた。
「……何よ…、あたしにやっと本音話してくれたじゃない…、なのに、それも忘れちゃったって言うの?……茜はどうなるの?」
「茜って……、佐野君?佐野君がどうかしたの?」
「奏。何でもないから。美里、お前いい加減にしろっ」
「佑樹は黙ってて!」
「はーい。病室で騒がないで下さいねー?病人に障りまーす」
緊迫した様子の二人の間から明るい声がして、見てみると、開かれたままになっていた扉の前に岡崎先生が立っていた。
「ここは病院です。喧嘩なら外でやってね?」
岡田先生のその言葉に佑樹は。
「すみませんでした。奏、今日はもう帰るから、ほら美里、行くぞ」
佑樹に腕を引っ張られる形で美里さんは病室から出て行きながらも、何か言いたげに私の顔をずっと見つめていて、私はそんな美里さんを引き止めたかったけど、それすらも出来ずに、出ていく二人を見送った。
「はい。まりあちゃん、もう入ってきていいよ」
岡崎先生がそう言うと、キッズルームに遊びに行っていたまりあちゃんが、扉の外からひょっこりと顔を出した。
「入りづらそうにしてたから、声かけた、話の腰折って悪かったかな?」
「いえ…、大きな声出したりして、すみませんでした…まりあちゃん、ごめんね。おいで」
まりあちゃんはひょこひょこと松葉杖をついて、おずおずと私のベットまでやって来た。
「おねえちゃん、だいじょーぶ?」
「うん。ごめんね?怖くて入れなかったんだね…キッズルーム楽しかった?」
心配気な表情のまりあちゃんに私は手を伸ばして、まりあちゃんの頭を撫でてあげた。
するとまりあちゃんは笑顔になって。
「うん!あのね。新しいお友だちができたんだよ」
そう答えて、いつものまりあちゃんに戻ってくれて私は安心した、
まりあちゃん。
怖がらせちゃってごめんね。