秘密
「茜、お帰り」
父さんはゴルフバックをリビングの隅に置いた。
「うん。ただいま。お帰り」
俺は変な返事をして、鍋をつつく。
「…その可愛いお嬢さんは?」
奏は慌てて立ち上がると、
「はじめましてっ、奥村奏ですっ」
ペコリと頭を下げた。
「父さん、俺の妹♪」
兄貴も立ち上がると、奏の頭を撫でた。
俺もすかさず立ち上がり、兄貴の手を払いのけた。
「奏に触るな、バカ静」
「何っ?兄貴に向かってバカとは何だ?バカとは!」
「バカにバカと言って何が悪い、バカ静」
「あぁっ!三回もバカって言った!茜のバカバカバカバカ!」
……小学生かよ。
「ほらほら、二人ともやめなさい。奏ちゃん挟まれて、困ってるじゃない。お父さん、奏ちゃん、茜の彼女」
「多分そうじゃないかと思ってたよ、はじめまして。奏さん、茜の父です」
父さんはソファーに近付くと、ニコリとした。
「はい。お邪魔してます。お父さんより先に、夕飯までご馳走になってしまって、すみません…」
また頭を下げる奏。
「礼儀正しいお嬢さんだね、遠慮しないでいいからね?座ろうか?」
父さんがそう言うと、全員で腰を下ろした。
両親は向かい側のソファーにゆったりと腰掛け、俺達は二人掛けのソファーに三人でぎゅうぎゅうに座っている。
「兄貴、狭い。向こう行け」
俺は一人掛けのソファーを指差す。
「俺ははじめからここに居たんだ、お前があっち行け」
「この場合、どう考えても兄貴が一人で座るのが当然だ」
「何をっ?」
「何だよ?」
「あはは。茜が帰って来たって感じだな、いつもは静は静かなのにな?あははは」
…父さん、ナイスオヤジ駄洒落。
「奏ちゃん、ごめんね?騒がしくて、ほら、静!あんた向こう行きなさい!」
「えぇ〜?いいじゃん、ここで…ね?奏ちゃん?」
「…あ。そうだ、私が向こうに座ればいいんじゃないですか、何で早く気付かなかったんだろ?」
そう言うと奏は一人掛けのソファーに移動してしまった。
いや、そうじゃなくてね?奏…
「…奏ちゃん、もしかして天然?」
兄貴が俺に耳打ち。
「……みたいだね」