秘密
◇◇◇


佐野君はうちから少し離れた公園にバイクを停めて、私を降ろしてくれた。

「ホントは家まで送って行きたいんだけど…」

ヘルメットを外してくれながら、佐野君は私にそう言った。

「さすがにそれは無理か…はは」

「…うん…あ。ジャンパーありがとう」

私がスタジャンを脱ぎかけると、

「いい。寒いから、着て帰って」

「…でも」

「いいから、中学の時のだし、もう小さいから、奏にやる」

「…ホントに?」

「うん」

佐野君のスタジャン…

貰っちゃった。

嬉し。

「…ありがとう」

私がお礼を言うと佐野君は「うん」と言って、私の頭をクシャクシャと撫でる。

「…もう少し、時間大丈夫?」

「…え?」

「…公園、少し、散歩しない?」

「あ。うん、今何時だろ?」

時間を確認しようと、肩に掛けているバックの中から携帯を取り出す。

そう言えば今日はバックに入れたままで、一度も携帯を見る事はなかった。

開いて見るとそこには12件の不在着信。

瞬間。
心臓がドキリと跳ね上がる。

……佑樹から10件…

キリキリと心臓が押し潰されそうな感覚になった。


「…どうしたの?やっぱり、ダメ?」

慌てて携帯を閉じる。

「ううん。少しなら大丈夫。23時までには家に着けば…あと15分位しかないけど…」

「…15分でも嬉しいよ」

佐野君は私の手を取り、歩き出した。


…私も嬉しいよ。
佐野君。


でも、佑樹からの着信…10件も…

…どうしよう、何て言って誤魔化そう…

直ぐにでも連絡した方がいいのはわかってるけど…

佐野君ともう少し一緒に居たい。


「座ろうか?」

佐野君はベンチに腰を下ろし、私もその隣に座る。

「今日は疲れただろ?」

佐野君が私の顔を下から覗き込んだ。

「え?そんな事ないよ?あ。でも、少しお尻が痛いかも?あはは」

「…往復約三時間だもんな…馴れないバイクで…奏のお尻が…揉んでやろうか?」

「…えぇっ?そんなつもりで言ったんじゃ!」

「あはは。わかってるよ」


佐野君は笑って、私の肩を抱いて引き寄せた。


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