秘密


佐野君の首筋に私の額があたってる。

私は急に引き寄せられて、緊張してしまい身体がギュッと固くなってしまった。

佐野君は黙って私の頭に頬を押し付けて、肩に回した方の手で頭を撫でている。

おでこにあたる佐野君の首筋からドクドクと脈打つのを感じる。

あの図書室の時もそうだったけど、佐野君の心音はどこか私を落ち着かせる。

自然と緊張も身体も落ち着き、佐野君の身体に身を預ける。


…気持ちいい。


夜の公園は入口に街灯が1つあるだけで、暗くひっそりとしていて、まるでここの場所だけ別世界のような感じだった。

…このまま時間が止まってしまえばいいのに。

私はそんな事を考えてしまうほど、今のひとときがとても大切に思えた。


「…そろそろ帰らないとな?」

「……うん」


佐野君は回した手を離すと、今度は両手で頬を包んで、私の顔を自分の方に向かせた。


「今日はごめんな?彼女だって、嘘つかせて…」

「…ううん、そんな事…」


ある訳ないよ。
私、嬉しかった。

ホントはずっと気分よかった。学校や佐野君のうちで、佐野君の彼女として居られる事が。

帰る時は彼女でもないのに、みんな優しくしてくれて、申し訳なくて、思わず涙が出てしまったけど…

今考えてみれば、佐野君の事、前から好きになってたんだね。

佐野君を近くに感じると、胸がドキドキする。
でもずっと一緒に居たいって思ってしまう。
佐野君と居ると心が暖かくなる。

それが好きって事なんだよね?

でも…

この気持ちは私の中でだけの秘密なんだ…

佐野君となるべく一緒に居るためには、私の心の奥底にしまっておかないと。

「……キスしてもいい?」

佐野君は優しくそう言った。

…これは佐野君にとっては浮気なんだ。

でもその優しい瞳が私の心を揺さぶる。

しまっておかないといけない気持ちが溢れそうになるのを、私は必死に押さえる。

「……うん」

私はなるべく平然を装ってそう言った。

でも内緒心臓は破裂しそうで、顔は熱くなってしまっていた。

今が夜でよかった。

暗いから。
顔…多分赤くなってるだろうから…


私はゆっくりと目を閉じた。




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