秘密
「…はい…うん…大丈夫……え?…今日はちょっと……うん……うん、ごめんね……また今度ね…うん…大丈夫だから…休んでれば大丈夫……じゃ、また明日…」
それだけ言うと奏は電話を切った。
「…もしかして、彼氏ここに来る?俺帰ろうか?」
帰りたくはないんだけどね?
奏が困るのは嫌だから……
「…ううん、大丈夫。断ったから…」
「…断ったの?」
「…うん。だって、佐野君にカレー食べてってもらいたいから…」
「…………」
……ちょっと、今の聞きました?
何が俺の事が好き。だよ。
…はっ、佑樹め。ざまみろ。
奏は俺に傾き始めてる、これは間違いない。
最近の俺は明からさまだしな。
今日の佑樹の態度を見ても、奏に対する俺の気持ちも佑樹にはバレてるだろう。
多分美樹にも…
体育館に戻って軽く練習し出したら、美樹が奏の鞄と制服を持ってきて、
『あたし用事があるから、かなちゃんの事頼むね?佐野君、かなちゃんを一人にしないでね?』
といつも陽気に笑ってる感じの美樹が、いつなく真剣な顔をして俺に言ってきた。
何故美樹がそんな事を言ったのか、俺の都合のいい考えかもしれないが、これは俺を後押してくれているのでは?なんて思ってしまった。
奏の変化に気付き、俺との事をきっと応援してくれてるんだね、美樹ちゃん…
さすが奏の親友。
いいやつだ。
「…うん。奏のカレー早く食いたい」
「もうそろそろご飯炊けるかな?ちょっと見てくるね?」
部屋を出る奏。
俺も続いて部屋を出る。
奏は再びエプロンを着けると、キッチンに立ち、炊飯器のデジタルを確認中。
…ショートパンツにエプロン。
これもかなり萌える…
奏の綺麗な白い足をつい目で追ってしまう。
…ヤバイ…また復活しそうだ。
俺は慌ててダイニングの椅子に腰掛け、足を組む。
…沈まれ沈まれ…
…今日の俺。猿以下かも……
「後10分位で出来るよ?簡単なスープだけでも作るね?」
こちらに笑顔を向ける奏。
…なんて可愛いんだ。
今すぐ抱き締めたい。
でも今は立ち上がれない。
何故かって?
それは男の事情だ。
………情けない。