貴方の恋人になりたいです
「朔、ボクとも勝負せぇへん?」
「あなたと?剣道で?」
今度は私が怪訝そうに顔をしかめた。
「せや。ボクが勝ったらなんでもひとつ、言うこと聞いてもらうで」
「……私が勝ったら?」
「ボクが朔のいうことなんでもひとつ聞いちゃる」
う……、なんて魅力的な話。
これで彼に勝てたら、私はなにを願うだろう。
「朔良、やめとき。おまえじゃ利緒に勝てへんよ」
む。そう言われると負けず嫌いな私は無償に挑戦したくなった。
「やる」
「それでこそ師範の孫やな。一本勝負や。ええな?」
「うん、着替えてくる」
止める那智にぃを無視して、剣道具を付けるとずかずかと彼の前に立った。
「ほな、始めるで」
「よろしくお願いします」
一応礼儀として一言そう言い、中の構えをした。
「ほう、ならボクはこれで」
そう言って彼は正の構えをした。
勝つ気まんまんじゃない……。
でも、私も負けてなんてやれない。
私たちは円を描くようにジリジリと間合いを取った。お互いに相手の隙を探してるんだ。
でも、彼には一寸の隙もない。
パンッ
バシッ
パンッ
お互いの竹刀が激しくぶつかり合う。