貴方の恋人になりたいです
柔剣道の横を通りすぎると、中から竹刀のぶつかる音が聞こえた。
「お、誰がやっとるんかな?」
那智にぃが扉の隙間から中を覗いた。
「なんや師範と利緒かいな」
御祖父様と……?
「なんや白熱しとるなぁ。朔良、少し見学していってもええか?」
目を輝かせてそう言われたら、嫌だとは言えない。
「いいよ」
仕方なくそう言って、そっと中に入った。
「おう、那智と朔良じゃないか。ちょうどよかった。私は今から抜けなければならない。利緒の相手をしてやってくれ」
そう言って、御祖父様は慌てた様子で母屋に戻っていった。
「なんや二人一緒で。これからデートなん?」
デート……
彼にそう言われて、胸の奥がズキリと痛んだ気がした。
「まぁな。今からアイス食いに行くんやけど、おまえもくるか?」
「アイス?」
怪訝そうに彼は顔をしかめた。
「弓道で勝負したら負けてもうたんや」
「あぁ、なるほどな」
彼は私と那智にぃを交互に見て納得したように頷いた。
そしてとんでもないことを言い出した。