貴方の恋人になりたいです
『会えない』の言葉が頭をよきった時、私はすでに走り出していた。
そう、彼のもとへ
彼はちょうど門を出るところだった。
「待って!!」
和服だと走りにくい…
なにもはかず、足袋のまま外へ駆け出した。
「待って、利ぃくん!!」
道を歩く彼の後ろ姿に声をかけた。
振り向いた彼は驚きの表情を浮かべていた。
「私、忘れないから。利ぃくんのこと。忘れちゃったら、今まで私が頑張ってきたことの意味が無くなっちゃう……。絶対に、ずっとずっと忘れないから、だから……」
走ってすぐに一気にまくし立てたせいか、息が続かない。
彼がゆっくりと近づいてくる。
下を向いていて、どんな表情をしてるのかはわからないけど…
「ほんま、なんで最後の最後に決心鈍るようなことしてくれるんやろ、キミは」
呟いた彼の言葉は一人事のようで小さかったが、私の耳にも届いた。