貴方の恋人になりたいです
目の前まできて、彼は足を止めた。
「だから…………?」
「…だから、絶対帰ってきて」
そう言うと、彼は柔らかく微笑んだ。
「わかった。約束な」
ふわりと温かいものに包まれた。
「元気でな」
そう言って、そっと私の額に口づけ、彼は闇の中へ消えていった。
どれくらいそうしていたのだろうか。
どう帰ったのかもわからない。
気づけば部屋で、温かいものが頬を伝っていた。
そっと触れてみると、それがやっと涙だということに気づいた。
「ふ…………っ」
涙だということを核心すると、ボロボロと涙が溢れた。
もう心とは関係なく、とめどなく流れていく。
空には憎らしいほど綺麗な月。
『満月の夜はよくないことがおこる』この言い伝えは本当だった………