KAGAMI


「もしもし?」

電話でも分かるくらい、騒がしい教室。

『莉麻ー?食べ終わっちゃうよ。まだ?』

笑い声でかき消されそうな電話越しの声。
それは大きいはずなのに、今は普通の音量のように感じた。

『ていうか、買えた?』


アタシはチラっと先輩の顔をうかがう。
音を出さずに口だけで「無理しなくていいよ」という先輩。

「ごめん、買えなかったの。で今、高杉先輩に一緒に食べようって言われてて…」

とりあえず状況を報告。
お腹が満たされれば、誰と一緒でも構わない。アタシは


『なんだ!だったら一緒してきなさぁ~い』

となぜか上から言われたアタシ。
別に何とも思わないけど。

『莉麻が購買で戦ってる姿なんか想像出来ないし、やっぱり買えなかったんだ』


確かに自分でも、購買合戦の中に入ってる姿は想像出来ない。
あんな混み合った人混みの中に居るって考えただけで、吐き気がする。

『それに高杉先輩って莉麻に告白した人でしょお?あの人イケメンだしいいじゃん!』


ちょ…!
なんで知ってるの?
アタシ、言ったっけ?

そんな記憶、今はそうでも良い。
受話音量は標準設定だけど、声が大きいから先輩に聞こえたか心配だ。
なんとなく、今のは聞いてほしくなかった。

高杉先輩のほうを見ると、アタシを見ながらしっかり待ってた。

聞こえてない…みたい。


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