KAGAMI
「田舎に帰るんだと。お見合いするんだって。」
思いっきり他人事のように話す想太くん。
告白されてあんなにまで迫られてたのに…
「そうなんだ。」
アタシも
自分から聞いたくせに他人事のように返した。
もうひとつ、あるでしょう?
だけど想太くんは話す気配がない。
「うん、それだけ。」
そしてスープに浮かぶアサリをフォークでつついた。
まだあるよ。
想太くんが話すこと。
アタシが聞きたいこと。
それなのに想太くんは、もう何も言わない。
「で?」
だからアタシは催促する。
少しずつ、焦らしながら…
それまで1度も見なかったアタシの顔を、想太くんが見る。
だからアタシは見ない。
顔を上げずに食事を続けた。
早く教えてよ、次のこと。