激愛パラドックス
「そんなこと聞かされて、俺がどう思うかとかわかんねーの?」
他の男の話なんか、聞きたくねぇんだよ。
それが雅也のことだとしても……。
「ごめんなさい」
涙をいっぱい溜めたユキが、頭を下げて謝ってくる。
その光景を、通行人が怪訝な顔で眺めていく。
「もう良いわ。送ってく」
腕を掴んで引っ張って駅の方向に歩いていく。
「…ごめんなさいっ」
「わかったから、泣くな」
直ぐに泣く女なんか大嫌いだ。
「ごめんなさい…」
謝れば済むと思いやがって……。
「嫌いに………ならないで下さい」
マジ女って面どくせぇ……。
「今日…帰りたくないです」
は?
爆弾発言に、立ち止まって振り返ると頬に涙を伝わせたユキが、上目遣いで俺を見てきた。
「アホ」
「…はい」
「帰るからな?」
「嫌」
「おい、駄々っ子。言うこと聞け」
「翔が許してくれるまで帰りません」
「…………はぁ」