激愛パラドックス
深い溜め息をつくと、ユキが唇を噛み締めるのが見えた。





「…どうしたら良いんだよ」



「へ?」



「ユキに当たっても仕方ないのは分かってる。だけど、お前と雅也がただの連れだって頭の中では理解してんのに、アイツの話が出てくんのに、いちいちイラッとする」



「…翔」



「なんなんだよ……」



こんな、ダサいことユキに言いたくなかった。



「…その、それって…ヤキモチってヤツじゃないですか?」



モジモジと、下を向きながら遠慮がちなユキに、顔が一気に熱くなる。



「ヤキモチ……」



つまり、嫉妬というヤツで……。



自分に、そんな感情を持ち合わせてるなんて思ってもみなかった。



恥ずっっ!



「翔、可愛い」



「………うっさい」



ユキにからかわれて更に恥ずかしさが増した俺は、ユキに背中を向けて歩きだした。



「あっ!!待って下さいよぉ!」



切羽詰まったユキが、走って追いかけてくるのが分かる。



こんな顔、ユキに見られたくねーよ。



「はぐれちゃいますって!」





< 114 / 118 >

この作品をシェア

pagetop