激愛パラドックス
「はい、コレ」


「えっ!?コレって洗浄液ですか?」


「そう。それ返さなくて良いから、あげる。ちょうどここにトイレあるし、鏡あるから。じゃあっ」


「えっ!?でも……」


戸惑う君から早く離れたくて、



自分の気持ちに気付くのが怖くて、



洗浄液を押し付けて屋上に向かった。



〜1ヶ月前の記憶fin〜



「なーに黄昏ちゃってんの?」



「うわっ!」


突然背後から声が聞こえて振り返ると、篤史の顔が至近距離にあって焦った声が出る。


「もしかして、恋?」


ビクッ!


「なに言ってんだよ。年中発情期のお前じゃないんだから」


心臓がバクツクのを悟られないように平静を装う。


「橋野ユキ」


どこか試すような表情で名前を告げる篤史。



えっ?ダレ、それ。


聞きなれない名前に首を捻る俺に篤史は、


「やっぱり知らなかったんだ?誰かさんが俺のカバンからコンタクトレンズの洗浄液を取ってあげた子の名前だよ」


「なんでお前がそれを知って…?」



はっとして口を紡いだ時にはもう遅かった。



篤史はニンマリしながら教室に戻っていく。


「待てよ!見てたのか?」



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