激愛パラドックス

あの時、あいつは確か在校生代表の一人として、体育館にいたはずじゃ……。


俺の問いかけに篤史は顔だけコッチに向ける。


「俺が大人しくくだらない話を聞くと思った?」


………確かに。



あの場面を篤史に見られていたかと思うと、恥ずかしすぎてかなりショックだ。


とぼとぼと教室に入ると、篤史の後ろの席に座る。



「…落ち込みすぎだって!」



俺の落胆ぶりに、ケラケラと笑う篤史。



「最近、グラウンドから門の方ばっか見てただろ。何見てんかなと思ってたら、入学式に見た子だったからピンときて、1年の後輩使って名前知ったわけ。ありがたく思えよっ」


弾んだ声でそう言う篤史は、どっからどう見ても面白がっているようにしか見えない。


「…余計なことすんなよ」



別に、俺はそのユキってヤツとどうこうなりたいとかってわけじゃねーし………。



「ってか、一目惚れなの?否定しないね」



「…違う。ただアイツ、ほっといたら転びまくって死んでしまいそうだったから…」



「"死んでしまいそう"って…」



苦笑いをしながらオウム返しをする篤史を睨んだ。



< 22 / 118 >

この作品をシェア

pagetop