激愛パラドックス
あの時、あいつは確か在校生代表の一人として、体育館にいたはずじゃ……。
俺の問いかけに篤史は顔だけコッチに向ける。
「俺が大人しくくだらない話を聞くと思った?」
………確かに。
あの場面を篤史に見られていたかと思うと、恥ずかしすぎてかなりショックだ。
とぼとぼと教室に入ると、篤史の後ろの席に座る。
「…落ち込みすぎだって!」
俺の落胆ぶりに、ケラケラと笑う篤史。
「最近、グラウンドから門の方ばっか見てただろ。何見てんかなと思ってたら、入学式に見た子だったからピンときて、1年の後輩使って名前知ったわけ。ありがたく思えよっ」
弾んだ声でそう言う篤史は、どっからどう見ても面白がっているようにしか見えない。
「…余計なことすんなよ」
別に、俺はそのユキってヤツとどうこうなりたいとかってわけじゃねーし………。
「ってか、一目惚れなの?否定しないね」
「…違う。ただアイツ、ほっといたら転びまくって死んでしまいそうだったから…」
「"死んでしまいそう"って…」
苦笑いをしながらオウム返しをする篤史を睨んだ。