戀愛物語
  
「やめろ」

「…!」

そっと手を包まれる。
けれど入った力はそう簡単には抜け切らなかった。

「……みこと」

少し躊躇いがちに、巡が名前を呼んだ。
すると不思議なくらい安心して、ゆっくりと力が抜けていく。
顔を上げ、巡の瞳を見つめた。
彼もまた、みことをじっと見つめていた。

静かに、静かに。
巡の瞳には、みこと以外の何者も映ってはいないようだった。
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