戀愛物語
だんだんと目頭が熱くなってくる。
涙を流そうとしているのか、私は。そう思うと惨めになってきて、なんて狡い女だろうと嫌になる。
都合が悪くなると泣くなんて、最低だ。
手の甲に爪を食い込ませ、痛みでごまかそうとした。
皮膚が少しだけ裂け、血が滲む。

すると無言で巡が手を伸ばしてきた。
うつむいていたみことは急に視界に入った大きな手に、びくりと身を震わせた。
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