戀愛物語
こつこつと靴の音が鳴り、こちらに向かって来る。
遡羅を照らしている光の手前で、靴音は鳴り止んだ。

「どうしたの? こんな場所に来て」

暗い場所に留まった巡の姿は、昼にみたものとは違っていた。

腰辺りまで伸びた漆黒の髪。冷たい感情しかない瞳は、血の色をしていた。
全身が闇に紛れるような色合いの服装で、白髪・白い制服の遡羅とは正反対の姿だ。

「ひとりなんて、危ないよ」

優しく告げると同時に、黒髪が大きく翻った。
空気を裂くような鋭い風が頬をかすめ、街灯が横薙ぎに切断された。
< 63 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop