偽りの温もり
「今日、飲み行くか?」

ヒデからの誘いは
基本、断らない。

けど、今日は
気分が乗らない。

「いや、今日は
残業なんだわ」

適当な理由をつけ
断るのは初めてだった。

一人でじっくり
考えてみるのも
手なのかもしれない。



「…ふーっ…」

今まで彼女が
いなかったわけじゃない。

でも、今までは
本気になれなかった。

久しぶりの一目惚れ。
久しぶりの恋。

感覚が
麻痺してたのかも
しれない。
けど、この人だけは
失ってはいけない、
直感で、そう思った。

『仕事終わったよー♪』

リオからの
メール届いた。

気づけば
8時になっていた。

悩みすぎだろ、俺。

しかも、どうやって
帰ってきたのか
覚えてない。

「もしもーし」

-…誰だ?-

そこには
俺に手を振るヒデ。
< 88 / 120 >

この作品をシェア

pagetop