千変万化の剣
「上策。

これは多くの者は生き残れる可能性が高いです。」


「さっさと言いやがれ!」

ベンケイが怒鳴る。


「陛下の首を差し出すことです。」




沈黙。

そして、


「今、何て言った!」

ベンケイがキレる。


「ですから、陛下の」


ガシッ、

ベンケイがクーメルの胸ぐらを掴む。


「てめぇ、ふざけてんのか!

陛下の首を差し出すだと!?


血迷ったのか!」


「血迷ってなどいません。


王女の首を差し出すだけで多くの兵士は助かります。」


「首を差し出すだけ、だと!?」


「万民のために命を犠牲にするのが王位を持つものの義務です。」


「てめぇ!」


「止めろ。」

幸大が言う。


「止めんなよ!」


「そこの愚かな軍師を殴っても解決はしない。」


「僕が、愚か?

下等な人間が何を言ってるんですか?」



「私は幸大に賛成だ。

愚か。

まさに貴様にピッタリだな。」


「どこが愚かだと言うんですか?」


「王女の首を差し出すだけでワコクは撤退しますか?」


クノイチが言う。

「どういうことだ?」

ベンケイが訊く。


「説明してやるよ。


ワコクの大軍が攻めてくる。


このまま戦えば絶対に負ける。


そしてワコクは王女の命がほしいんじゃない。


ジパングの崩壊。


そして、亜人種という奴隷や捕虜がほしい。


つまり、王女の首を差し出すだけでワコクは撤退しない。

なぜなら、このまま攻めればジパングも王女の命も両方手に入る。

どちらかを手にしたからと言って撤退する必要はないんだ。」
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