雨音の記憶
夏実はそれを聞くと、小さく肩を震わせてくすくすと笑い始めた。
「俊介も子供の頃は可愛かったのね」
「ああ、恥ずかしい話だけど、その時の写真も残ってたりして、両親からは、俺の結婚式の時に、スクリーンにでも映して、お前に見せて一生頭が上がらない様にしてやろうとか企んでるらしい」
「まぁ、それは楽しみね。それ、是非やりましょう」
「よせよ、ホントに、あの場面を写真に撮られたのは、一生の不覚、人生で一番の汚点だとおもってるんだから」
「それじゃぁ、尚更、見てみなくっちゃ。俊介の腕白だった時代、可愛かったんだろうなぁ」
「よせ、たのむ、ホントに心から頼むよ」
俊介はそう言うと、テーブルに手をついて、夏実に向かって深々と頭を下げた。

夏実は、それが可愛く見えて益々笑いが止まらなくなってしまった。

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