ずっとあなたが好きでした
俊也は優しく接してくれて、私との蟠りを失くそうとしてくれた。

でも、私は緊張し過ぎていて、また訳分かんない事を言っちゃいそうで、何も言えなかった。

もう無理だよ。

この空気に耐えられなくなり、私は俊也に何も言わず、走って逃げた。

こんな事、本当はしたくない。

こんな事したいわけじゃないよ…

俊也が

「何で行っちゃうの?」

って言ってるのが微かに聞こえた。

「矢吹くん、本当にごめんなさい。」

心の中で何度も俊也に謝った。

俊也に変な子だと思われても仕方ないと思った。

お見舞いには行くのに、何で急に走り去っていくのか、自分でも何をしているのか、何がしたいのか分からなかった。

けど、この時どうしても俊也と普通に話せる自信が持てず、こうするしかない気がした。

前みたいに何で普通に話せなくなっちゃったんだろ?

伊藤くんを好きだった時は、こんな事なかったのに…

好きでも普通に話せたのに…

むしろ、伊藤くんとは話したくて話したくてたまらなかったのに…

何で、矢吹くんの時は話せなくなっちゃうんだろ?

私、話さなくなっちゃうんだろ?

黙っちゃうんだろ?

逃げたくなっちゃうんだろ?

しかも、伊藤くんの時は、こんなに自分の容姿の事なんて気にならなかったのに…

あーそうか。

矢吹くんだからだ。

みんなの憧れの的の矢吹くんだからだ…

矢吹くんだから気にするんだ、私…

私の中の絡みついた糸がするすると解けていく気がした。

じゃあ、もし自信があったら、私、矢吹くんと話しながら、教室まで一緒に来たのかなぁ?

「自信」

私にはこの言葉が重くのしかかった。

私には自信が全くない。

もし自信があったら、今日でも矢吹くんと一緒に歩けたのに…

でも、どうしたら自信なんて持てるの?

矢吹くんなんて私にとったら雲の上の人なのに…

私、何でそんな人を…

自信なんて、そんなの永遠に持てないよ。

だったら、せめて美人でも可愛くもない、何の取り柄もないからこそ、矢吹くんと一緒に歩けるチャンスがある時は、自分の中で最高な姿でいたいよ…

先に着いた私は、教室であっこと話していた。

俊也が来た。

俊也は悲しそうな顔をして、私の方を見ていた。

そんな顔してこっちを見ないで…

お願い…

私に何も期待しないで…


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