【B】君の魔法
各国の言葉で次から次へと
話しかけられるままに
返答を返していく。
英語の時は、
にこにこしていた彼女も
イタリア・ドイツ・フランス・ギリシャと
言葉が変わっていくに連れて
会話に入れなくて、
表情がこわばっていくのを感じる。
それでも彼女は
わからないということを
悟らせないように
プライドだけで
気丈に立ち居振舞う。
背筋を正して
笑みを浮かべて。
「ウィル」
目の前の今日の主役に
声をかけると
人の花道が出来上がる。
開いた中央を
ゆっくりと
通って親友の前へ。
親友とドイツ語で
会話を交わした後、
「少し彼と出掛けてくる」と
彼女に耳打ちをして
その場を離れた。
次に戻ってきたときには
彼女のプライドは
粉々に
粉砕されているだろうと
知りながら……
ハイエナの群れの中に
一人……取り残す。