【B】君の魔法
二時間ほど
家の中での仕事を終えて
出掛ける準備を
中野の手を借りて終えると
ちょうど支度を終えた
尊子が、
ゆっくりと一階に
姿を見せるところだった。
彼女の傍に近づいて、
ゆっくりと手を差し出す。
有村のスタッフたちは、
彼女の傍に
ゆっくりと控えて
俺の方を見る。
「綺麗だよ、尊子」
儀式のように
言葉を紡ぐ。
彼女が求める言葉を
当然のように。
「君たちもすまない。
尊子の支度を
してくれて有難う」
そう告げた後、
二人は各々に一礼をして
静かに中野に見送られて
屋敷を出て行った。
「尊子、行こうか?」
パーティバッグを手にする
彼女の指に力が入るのを
感じる。
エスコートするように
手を差し伸べると、
その手に自らの手を重ねて……。