【B】君の魔法
祐太の車を降りて
出社する私。
私の隣には……
能美さんが寄り添う。
三人で地下駐車場から、
一階のエントランスまで来ると、
クリスタルエレベーターの前に
立ち止まる。
「なら華南、
尊子のこと頼むな。
まだ無理させないでくれ」
「何ども言わなくても
わかってるわよ。
ほらっ、お兄ちゃんもとっとと
仕事にいきなって」
祐太を追い出すような勢いで
追い払う光景を見て、
思わずクスクスと
笑みが自然に零れ落ちた。
「って言うか、
雪路さんもそうやって笑うんだ」
到着したクリスタルエレベーターに
ゆっくりと乗り込むと、エレベーターは
最上階まで浮遊していく。
「どうして?」
「私、誤解してたかも。
自分でもマズイなって思うんだけど、
結構、私お兄ちゃん子なんですよねー。
兄が、雪路さんと付き合ってたのも
知ってたんです。
兄が……雪路さんに
プロポーズしたがってた事も」
プロポーズ?
祐太が?
妹の口が
紡がれた予想外の言葉に
びっくりする。