【B】君の魔法




「尊子、私、手が離せないのよ。
 心さんも、別件対応中だから
 今日は、会長に
 尊子がついてくれる?」






突然の言葉。


恐れていた瞬間。








突然の言葉に
思わず戸惑いながら
小さく頷く。







会長室の扉の前、
小さく深呼吸して
ノックする。







「はい。
 どうぞ」





懐かしく
心地よいテノールが
聴覚を刺激する。





その声で……
名を何度も呼ばれていた
そんな甘い時間が
今は懐かしい。




ゆっくりと扉をひいて、
姿勢を正して
お辞儀をする。
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