【B】君の魔法
「……寒っ……」
思わず、
声を漏らして
体を震わす私に
男は、
自分のコートを
さりげなく羽織らせる。
まるで……
映画のワンシーンを
こなすかのように
さりげなく。
「これで
寒くないでしょ。
君のコート。
ほらっ……
染みが出来てる。
真っ白いコートに
こんなに
染みつけたら
勿体ないよ」
……染み……。
何時の間に…。
男の声にきっかけを作られて
ゆっくりと……
記憶の海を遡る。