ひとりぼっちの君へ
嫌だという言葉は、西村の必死の頼み込を見たら言えなかった。
溜息混じりに「解った。」と答えると、西村の表情がぱぁっと明るくなる


「さっすが松本だ!よし、何が食べたい?チョコか?予算は100円な」


ご機嫌にコンビニに入る西村の後を俺は追う。
別にチョコも何も要らないんだけど、そう言うなら貰っておこう。ぐらいの考えで。


だけど、それが俺と彼女の出会いに繋がった。


西村のおかげとか、思いたくないけれど。


「いらっしゃいませー」

自動ドアを開けると、覇気のない店員に出迎えられ、俺達はお菓子コーナーへと進む。


なんか、小さな子がいるな。と、思った。


だけど子供ではない。ふわりと巻かれた髪、薄手のニットカーデにすっぽりと着られているような女の子。
パックの紅茶を持っているその子は、ペットボトルのジュースが並んでいるショーケースの前で悩んでいる。


開けて、手を伸ばして、何も取らずに閉める。

その仕草を見て、俺は思わず吹き出してしまった。
だって、あれ、もしかして届かないんじゃ…。


「松本?」


不思議そうに西村が首を傾げる。
そんな彼を無視して、俺はその子の隣まで歩いていった。


「どれですか?」
「えっ」
「どれ欲しいんですか?」


なるべく自然に言って、微笑んで見せた。
小さな彼女は少し驚いた様な表情をした後に、恥ずかしそうに「あの一番上のやつ」と指差す。


俺はショーケースを開けると難なくそれを手に取り、彼女に渡した


「あ、ありがとうございます。」


ぺこり、頭を下げる彼女につられるように俺も頭を下げた。
少しだけ慌ててレジに向かう彼女の背中を思わず目線で追う。

だって、可愛い。
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