王子様の溺愛カメラマン
その時





コツコツと静寂を割る足音がして私たちの前に一人の怪盗が現れた。






―――え?



白いタキシードに白いマント。


目には仮面を付け、その表情は見えない。






「お前…!」



冬島先輩は声を上げた。



それと同時に白い怪盗は華麗に私を抱き上げると


まるで本物の怪盗が他国の姫をさらうように私をその場から連れ出した。



「このコソ泥…!」


キャ――――――!!

うわぁぁぁ―――!!



先輩の声はものすごい歓声に揉み消された。




怪盗に抱き抱えられながら薄い暗いホールをすり抜けていく。






仮面に隠されたその顔に…


私は涙をこらえて彼の首元にギュッと腕を回した。






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