王子様の溺愛カメラマン
――ガチャリ


そこへリビングの扉が開きオカンが登場した。


親父はようやく黙った。

親父もオカンには弱いらしい。



「なんだ、風呂ずいぶん早かったんだな?珈琲でも淹れてくれるか?」


「………」


親父の言葉にオカンは黙ってキッチンに向かうとお湯を沸かした。


親父は平然を装うようにゆったりとリビングの椅子に座った。


だけど後ろめたい気持ちでもあるのか、ソワソワしているのがバレバレだ。






「はい、愛情たっぷり珈琲よ」


「ん、サンキュー」




可愛いピンクのマグカップに入った珈琲に口をつける親父。


そして親父はそのまま珈琲を吹いた。





「ブッ…!!な…なんだこれ!醤油じゃねーか!」



口元をグイッと拭いながら親父がオカンを見ると、オカンの背後には黒いオーラが渦巻いていた。



親父はまた一瞬で黙る。


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