王子様の溺愛カメラマン
その夜

テントの中で寝ていた私の足を誰かがつついた。



「う~ん…むにゃ?」


「おいエマ、起きろよ」


声を押し殺しながら寝ぼける私を呼ぶのは日向くんだった。


「ちょっと来いよ」


「ん~…?」


ママとパパとお兄ちゃんを起こさないように私はこっそりとテントを出た。


「……なぁに?」


「セミの羽化。見に行こう」


懐中電灯を持った日向くんが歩き出す。


えぇ??


「ちょ…ちょっと待ってよ~」


私はサンダルをはくと慌てて日向くんの後を追った。


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