王子様の溺愛カメラマン
「え~みんな揃ってるなんて珍しいじゃん」


制服を脱いできたエマが俺の後ろからリビングに入るなり声を上げた。


「パパ、水梨さんとこの日向くんだよ」


「………」


エマの親父は黙って新聞を閉じた。


「分かるわよね?ヒロキくんにそっくりだもんね」


エマの母親がエマの親父をなだめるように笑顔で言った。



ってか…エマのおっちゃん、こえぇぇ!



エマの兄もクールな感じで俺には無関心なのか自分の世界で読書をしていた。


「冬馬お兄ちゃんも昔のパパにそっくりだから、日向くんと並ぶとなんだか昔を思い出しちゃうわぁ」


エマの母親だけはひとりでニコニコしている。


「ごめんね。うちのお兄ちゃんとパパ、異常に無口なんだ」


エマはコソッと俺に謝った。


「普段は二人ともいないのに…今日に限って」


チッとでも言いそうなエマの意外な表情に俺は思わず笑った。


だって…普段ほんわかしてるエマがいっちょまえに父親には反抗してるなんて。


俺にはそんなエマがツボだった。


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