仮病に口止め料
水風船に針を刺したら一気に中身が溢れ出る要領で、
電車の扉が開くやいなや改札口からは一日を始める人が流れてくる。
そうして、のんびり朝の挨拶をしている俺たちカップルの前を通り過ぎていくストライプのスーツがバブルに洒落ているサラリーマンや、
音洩れは迷惑だとクレームが叫ばれている昨今、逆らうようにヘッドフォンから自己主張を垂れ流す大学生や、
イケメンを目指しているらしき張り切った髪型が不自然すぎて空回りしてしまった他校生が、
澄ました面で俺の彼女を目で食べていった。
キラキラ可愛い女の子を完食した証拠に、通り過ぎる連中の大半が彼氏をシカトして唇の端をつりあげたのだから、
まったくけしからん世の中だ。