仮病に口止め料




暗がりの夜は恋人らしいけれど、逆に清潔な太陽の下でキスをする方もこれまた粋、捨て難いと思う。

空気を破りかねないいびつな笛の音が鳴り響く運動場には、

お揃いの体操服にアレンジをきかせ、わざと袖を捲ったり他校のジャージを履いたりしている(自己愛に満ちた)生徒が散らばっていた。


さて、本日の洋ちゃんはご機嫌だった。

理由は今朝愛しの女神と一緒に登校中に信号待ちをしていたら、

カラオケでオールをしたと思われる知らない輩どもに車の窓から『美男美女少年少女カップルか!』とか、

『泣かすなよ青春しろよ』とか『今を生きろよ勝ち組高校生』とか、(テンションを間違えた野次に似た)ありがたい言葉をもらえたからだ。

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