仮病に口止め料


さてさて、トリップもほどほどにして今に戻ろう。

愛しの我が姫は風邪を引いていらっしゃる。


「過保護でナンボ。早く職員室。お兄ちゃんの言うことはだいたい正しいんだよ。お前妹なんだからお姉ちゃんの言いなりだろ、だから従え、田上さんは風邪。職員室、な?」


思いやりある彼氏の誘いを断る恋人は、これみよがしに首を横に振るう。

そして、俺がまだあんまり触ったことがない髪の毛がふわりと遅れてダンスを踊った。


やはり異常なチーク状態から風邪気味ではなく本物の風邪だと断定し、

「行こう」と半ば強制的に、(少し前に流行った俺様みたいな強引さとは違うソフトな誘導で)腕を引こうとしたら、

なんとまあハートブレイク、痴漢を叩くように小さな攻撃で払われてしまった。


宙にさまよう寂しい手は行き場がなく悲しんでいて、耳の中に残った音がそのまま心臓の裏を痛めた。

< 99 / 222 >

この作品をシェア

pagetop