たとえばセカイが沈むとき


 もうすぐあの場所へさしかかってしまう。

 何かないか。何か。何か。

 焦る気持ちが、口をついた。

「あの……!」

 振り向いた二人。過去の僕は、僕を見た瞬間にからだが緊張したのが見てわかった。チサトは不安そうに、僕と過去の僕を見比べる。

 彼らの目前に立った僕は、顔の半分近くを、襟元を不自然に上げる事で隠していた。

 電光で明るくはあるが、夜の薄暗さが味方したようだ。顔上半分も上手く隠せたようで、僕とは気付かれていない。

 二人とも不審そうにではあるが、僕が何と言い出すのかと、待っている。

 時間を引き延ばす為に、何でもいいから兎に角話しをしようとした瞬間。二人の背後になった事故地点にて、自動車が突っ込むのが見えた。

 幸い誰も巻き込まれなかったみたいだ。心の隅で、もしチサトの代わりに誰かが事故に巻き込まれでもしたらと不安に思っていた。なるべく考えないようにしていたが。しかし杞憂に終わって良かった。

 僕は事故を一瞥すると、物凄い物音で振り返った二人から逃れるように、その場を立ち去ろうとした。


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