forget-me-not
『――新戸(アラト)くん』
秘密会議室――実際、ただの古い資料室。
そこを拠点にひっそりひっそり、活動しているのが我らがサークル。
「あ、雨嶺先輩」
雨嶺先輩とはずばり、雨嶺 風(アマミネ フウ)、私のこと。
秘密会議室のドアに凭れて私を待っていた新戸くんは、キラッキラの大きな黒い瞳を見開いた。
色素の薄い茶色い毛並みをフワフワとワンコみたいな天然パーマが強調している。
『ごめん、待った…?』
「いえ、全然!」
驚いたように大袈裟なリアクションで首をふると、フワフワの髪が揺れる。
(可愛いなぁ)
こんなに可愛い顔してるんだもん。
もっと自信家で男らしかったらきっと今より一層モテただろうなぁ。
なんて。余計なお世話である。
「…実は、例の本、手に入ったんです」
先程とは打って変わり、真剣な顔つきになった新戸くんはゆっくりと会議室のドアを開けた。