forget-me-not
「それは……ないんじゃない?」
『何で?』
「だって、彼、あんたのこと……」
ゆっくりと静かに言葉を紡ぎだすリカの視線が床のカーペットをさまよう。
どこか心ここに非ず、といったふうで、いつも明瞭ではっきりしているリカらしくない。
(…リカ?)
「あんたのこと、相当好きよ、きっと」
あれ、と思ったのもつかの間、次の瞬間にはいつもの明るい笑顔に戻ったリカは、にっこりとそう言った。
『だけど、もうたぶん、会えない……』
「そぉんなことないってー、絶対またひょっこり帰ってくるんだから。あんたに会いたくなって」
『……』
「そのときは……」
また、リカの言葉が途切れる。そして、せつなげに眉尻をさげる。
「――そのときは、絶対に離しちゃだめだよ?ちゃんと捕まえて、付き合っちゃいなさい。そろそろ彼氏いない歴に終止符打たないと!」
彼女なりに、いつまでもトラウマをひきずる私のことを心配してくれていたのだろう。その言葉に、ジーンと熱く胸にこみ上げるものを感じた。