forget-me-not
『で、なんで莉子さん、誰にフられたの?』
リカにあの話をしても意味がない。
彼女は奇怪現象、神話、等々全く信じない質だから。
曰わく『目に見えないものは信じない』らしい。
「知らなぁい。なんか急に現れた美少年に、ですって」
確かに変な話だ。
――4年の莉子さん
って言ったらこの大学のミス。
並んだらリカでさえ小物に見えるくらいのテクニックと美貌を兼ね備えた女性。
落ちない男なんて、聞いたこともない。
(…それを、フるなんて)
確かに大スクープだ。
『へぇー、やるね。急にってことは1年生?名前は?』
「それが海外に居たとかなんとかで、私たちと同じ3年らしいの…!名前は、えっとー…
名前を思い出そうと必死なリカが、その綺麗な顔を歪めた。
けれど私の脳内はその間にも、「あのこと」でいっぱいになってしまう。
(…なんで、あの本にもないの?)
じゃあ、一体どこに手掛かりがあるというんだろう。
このままじゃ、もう…
「―――思い出したわ!」
嬉々として、リカが、叫んだ。