forget-me-not






のそりと身動きして壁にかけられた時計を見やれば、いつのまにかもう10時を越していた。

ありえない、と内心苦笑しながら這いつくばるようにソファへ移動する。

その隣にある棚の引き出しを開く。

手を中に忍ばせて、私はあるものを探した。



(…あ、れ、ないな)



がさごそと暗闇の中手さぐりを続けるも、お目当ての感触は見つからない。

仕方なくよろりと立ち上がって部屋の電気をつけると、再び引き出しの中を捜索した。



(…確かに、ここにいれたはずなのに)



夜くんとの出会い、正確にはそれが三度目の再会だったわけだけど。

それを思い出していたら懐かしくなって、無性にアレを見たくなった。




『…なくし、ちゃったのかな』


呟いたら余計に空しくなった。









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