forget-me-not
『もう、実演しかないんじゃないのー?』
ハァ、と溜め息混じりに腕組みをしてそう言い捨てれば、
(…な、なんだよ)
そのただでさえ、アレな瞳をさらに広げて私を見つめ返す。
「実、演…」
『そうだよ実演。実際にやってみれば恋心もわかるんじゃない?』
(…ぶっちゃけ、テキトーだけどね)
「――せーんぱーい!」
タッタッタ、
可愛い呼び声が背後から響く。
「先輩先輩、大変です…って、え?」
息を切らして走ってきた新戸くんは、案の定、黒川夜を視界に入れた途端固まった。
「わ、わわわわわ…」
いやいやあからさまにキョドりすぎだから。と内心突っ込みつつ横目に彼を見た。
隠しもせずに思いっ切り黒川夜目掛けて指差しては口をあんぐり。
「…なんなの」
初対面から無礼な態度に遺憾だと言わんばかり、黒川夜はいつにも増して退廃的な冷めた瞳で問う。
「わ、わわ目があおい。あおいあおいあおいー!!」
ガキ並みのリアクションに私も若干引きながらも仕方なく彼を宥めた。
『新戸くん。落ち着きなさい』
なんで私がこいつのフォローをしなきゃいけないんだろう。
当の本人は指を指されたままに小癪に首を傾げて…
完全に蔑みの、目だ。苦笑