forget-me-not
――リンパ癌。仮にも癌だ。一晩でこんな、魔法のように完治するわけがない。
(…夢?)
首を傾げて頬を抓るも、何かが起こるわけもなく。
放心状態の私を訝しんだリカは、
「フー?なにしてんの?」
『…へ?や、べ、別に』
「ねぇえー?私夕べ不思議なもの見たんだけどぉ」
もうスッカリ調子が良いらしいリカは、突然そんなことを切り出す。
『不思議なもの?』
「うん。黒川夜くんがね、居たの」
『………え、』
「でも、なんか…。ッブ、フフ、クス、」
真顔で昨夜のことを真剣に思い出していたリカは、急に吹き出して笑い始めた。
「…あのね、ブ、フフ、黒川くんね、コスプレしてたの」
『―――ハァ?!』
予想外の回答に素っ頓狂に裏返った声をあげてしまう。